「蔵書印ツールコレクション」について

「蔵書印ツールコレクション」は、国文学研究資料館の准教授を務めておられた故青田寿美氏による日本学術振興会科学研究費補助金挑戦的研究(開拓)「蔵書印データベースの高次利用に向けた情報拡充と篆字学習インターフェイスの開発(JSPS科研費 JP20K20325, JP18H05304)」の一環として一般財団法人人文情報学研究所において開発された成果物を発展させたものです。「篆字画像検索システム」を主要コンテンツとしており、これに、2022年度末に国文学研究資料館において運用停止が決定された「篆字部首検索システム」及び「蔵書印データベース」の検索システムを加えたものです。

篆字画像検索システムは、篆書字体データセット(現在は人文学オープンデータ共同利用センターにおいて公開されている)を教師データとして深層学習による文字画像からの篆字の検索を可能としたものです。

篆字部首検索システムは、上記の科研費プロジェクトの成果物の一環として、部首から篆字を検索できるようにしたものです。ここでも、篆書字体データセットが活用されています。

蔵書印データベース検索システムは、国文学研究資料館において故青田寿美准教授が作成されていた蔵書印データベースのコンテンツを継承したものです。旧データベースよりも使い勝手がよくなるような工夫がなされています。しかしながら、残念なことに、利用許諾の関係で同データベースの完全な継承はできておりません。可能な限り許諾をいただき、現在も手続きを少しずつ進めております。かつては4万件以上の蔵書印画像を収録していたものであり、当面はそれを目指しつつ、さらなる拡張を目指しております。

蔵書印データベースの検索システムを蔵書印ツールコレクションの一環として一般財団法人人文情報学研究が運営することになった経緯は、蔵書印データベースが国文学研究資料館において運用困難となり、検索システムの提供が停止となることが決定したためです。国立の研究所という厳格なシステム運用が求められる場でこのような発展可能性を秘めつつもしかし常に開発途上のシステムを維持し続けることが困難であることは、一納税者としては、やむを得ないことであると理解できます。

しかしながら、結果として古典籍の書誌情報入力担当者や愛書家の方々にとって有用であろうこのデータベースが利用できなくなってしまうことは、単にそうした方々の利便性を下げてしまうというだけでなく、デジタル時代における人文学の将来的な展開という観点でも好ましいことではなく、人文情報学に取り組む当研究所としても見過ごすことのできない問題でした。一方、当研究所では、故青田氏の研究プロジェクトに協力するなかで、篆字画像検索システムや篆字部首検索システム等、蔵書印データベースに関するいくつかの開発業務を担っており、内部的にはすでに蔵書印データベース自体も扱っていたため、その検索システムを新たに提供することは、技術的にはそれほど困難なことではありませんでした。

ただし、蔵書印データベースを継承したとは言え、そこでこれまで提供されてきた蔵書印画像は、利用条件が必ずしもオープンなものばかりはありません。利用条件がオープンな画像については、そのまま継承できましたが、そうでないものについては、国文学研究資料館として許諾を得ていたものや、故青田氏が個人的に利用許諾を得ていたものもあり、適宜新たに利用許諾をいただく必要がございました。蔵書印画像のうち2万件近くがそれに該当しており、利用許諾の取得をすべて終えるにはまだ少しの時間がかかる見通しです。

このようなことで、まだ不十分なところも多々ありますが、現代的なWeb技術を利用した蔵書印や篆字の検索閲覧をお楽しみいただければと思います。

なお、当サイトの構築は、有限会社フェリックス・スタイルと当研究所が担っております。今後も機能やデータの拡張に取り組んでいくことを目指しておりますので、よろしくお願いいたします。